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取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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保守派かリベラル派か、遺伝子が決定要因に?
アトランタ(CNN) 右利きと左利きが生まれつきの傾向とされるのと同様、政治的に「保守派」か、「リベラル派」かという思想の違いにも、遺伝子が影響を及ぼしている――。米国で、最近、一部の政治学者らがこんな説を主張して、論議を呼んでいる。
保守派、リベラル派といった思想は、育った家庭や周囲からの影響によって形作られるというのが従来の定説だが、これに一石を投じたのは、米ライス大の政治学者、ジョン・アルフォード氏。3年前、1万組近い双子を対象にした調査を実施し、互いに同じ遺伝子を持つ一卵性双生児は、二卵性双生児に比べ、政治思想も重なる場合が多いとの結果を発表した。同氏は、「遺伝子の組み合わせによって、われわれがどのように外部からの情報を処理するかが決まり、それが物事のとらえ方、ひいては政治的な意見にも影響するのではないか」と考えた。
これをきっかけに、米国内では、政治思想と遺伝子の関係が注目されるようになる。ニューヨーク大とカリフォルニア大ロサンゼルス校の神経科学者らによる共同チームは昨年、43人の対象者に自分が保守からリベラルのどこに位置すると思うかを尋ねたうえで、コンピューターゲームをする際の脳波をそれぞれ測定した。その結果、保守派とリベラル派では、脳内で複雑な情報を処理する「帯状回前部」と呼ばれる部分の活動に違いがあることが明らかになったという。研究を率いたニューヨーク大のデービッド・アモディオ准教授は「これまで、われわれの政治的な立場は文化や環境によって規定されると考えられていたが、実は脳の器質的な違い、つまり遺伝的要因と、環境との相互作用で決まることが分かった」と述べている。
さらに、カリフォルニア大学サンディエゴ校の政治学者、ジェームズ・ファウラー氏は最近、選挙の投票に行くかどうかという行動の違いと、特定の遺伝子の種類との間に相関関係が見つかったと報告している。
こうした研究については、「手軽な調査、実験から乱暴な結論を導き出そうとしている。政治学は自然科学ではない」(米デューク大の政治学者、エバン・チャーニー氏)といった批判も出ている。だがアルフォード氏は、「遺伝の影響があることは明白だ」と反論。「物事のとらえ方が生まれつき違うのだと考えれば、政治的思想の違う者同士も互いに認め合うことができる。われわれの研究は、そういう意味でも役に立つだろう」と話している。
(2月17日、CNN)

こういう言説には注意が必要だと思います。ここで一部の研究者によって主張されているのは「政治的な立場や選好に、遺伝子が一定の影響を与えている可能性が高い」という内容なので須賀、こういった主張が飛躍し、あるいは他の言説とくっついてしまうと非常に危険なのではないでしょうか。
今の日本でも、特定の民族を名指しして「犯罪のDNAを持っている」と宣うような、信じられない政治的センスのレイシストが首都の政治を預かっていたりするわけです*1し、多くの場合政治的アイデンティティの問題がその論拠とされているとはいえ、「リベラル」ないし「左翼的」とみなされる立場を表明する人はしばしば「在日」であると「攻撃」を受けるわけです。そもそもそれを相手に対する「攻撃」として行っている*2というその時点で差別的なわけで、まさに論外と言うべきだとも思うので須賀、そこには確実に一定の遺伝的な共通性と政治的、あるいは社会的選好をつなぐ思考回路が存在しています。
そこに上のように、一見すると科学的に見える*3方法で、遺伝子という先天的なものの性質から一定の傾向が見えるのではないか、とする見解が接ぎ木されると、冷静な科学的検証や論理的整合性を無視した、イメージ先行の人種主義的主張の跋扈を招くのではないか。そう直感して不安になったわけです。

*1:やっぱこれ言ってやればよかったかなww

*2:一方で「特定のバックグラウンドを持ち、その利害に基づいて発言している」(と決め付けて、その)相手を非難、というスタンスもあるように思います。これは時々ここでも指摘する「中の人」的なものの見方にも通じますね、そういうの大嫌いです

*3:正直上の記事の内容だけでは判断できないですよね…