- 作者: 陸奥宗光,中塚明
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1983/07/18
- メディア: 文庫
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条約締結に向けた最終局面で、(3)ゆえに列強への根回しを避けてきたことが一見裏目に出るような形で*1三国干渉がなされ、遼東半島を返還するに至るわけで須賀、これについては著者の「弁解」するように、一々各国に根回ししていては収拾がつかなくなり、実際に得られた条件までも失われた可能性がある、というのはあながち間違った見方ではないでしょう。どちらにしても多難の道であることは疑いなかったわけで、ここでは双方の手法を採ることの得失より、どちらか選んだ手法を(ぶれずに固執せずに)上手く適用していくことができたかどうかという評価の仕方でもよいように思えます*2。ちなみに三国干渉について著者は、露仏同盟の分断を狙ったドイツが、日本の大陸侵出に懸念を増しながらも踏み出さずにいたロシアをけしかけ、フランスは関係上乗らざるを得なかったものと分析しており、その点もまた興味深く感じました。
要は結構面白く読めたので須賀、一方で個人的に印象に残ったのは(当時の)外交の手法や戦術についてでした。各国駐在の公使が相手国のどんな人とどういう形でやり取りをしているとか、例えば日本とドイツの二国間関係に関するやり取りが第三国であるはずのイギリス駐在の両国外交官の間でなされていた*3とか、本国からの電信が届くまでのタイムラグという技術的な制約があったとかという、恐らく著者自身の記述の眼目でなかったろう部分が、(当時の)外交の生の現場を映し出していて面白かったです。まあ一番驚いたのは、清の李鴻章らが日本との和戦をめぐってやり取りしていた電信が日本側に筒抜けだったことなんですけどねwww