現代イギリスを代表するノーベル文学賞作家の代表作です。
自然豊かな学園寮の描写から始まっていくので須賀、「何かが違う」雰囲気もまた序盤から漂っています。密な人間関係を育む同級生同士の機微が丁寧に語られつつも、徐々に明かされていく奇怪な世界観に慄かされました。
薄々予感されていた結末は、最終盤にはっきりと明かされることになります。人は皆いつかは死に、それが満足のいく形で訪れるかどうかは全くもって保証の限りではないことはある意味共通しているはずです。それでも、他人の犠牲になることがそもそも運命付けられており、しかもその関係の断絶が明白に存在する不条理は覆い難いものでしょう。
最後のあたりを読み進めながら「察しの通りなら、それをはっきり明かさなくていいのでは?」と思ってしまったのは、それが「やはり」突きつけられてしまうのが嫌だったということでもあったのだと思います。
その意味では、相当エグい物語です。ただ、それが意外なほど迫り出して来ず、同じく10代で寮生活を送った経験がある者が(イギリスに行ったことすらなくても)ある種の懐かしさすら感じたのは、やはり最初に述べたような細やかな筆致故なのだとも感じました。