かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『メディアが動かすアメリカ』(渡辺将人)

 

アメリカの下院議員事務所や大統領選挙のニューヨーク州支部、テレ東記者などを経て現在はアメリカ政治を研究する著者が、同国のメディア・ジャーナリズム事情を紹介する本です。

アンカー神話が崩壊し迷走すら見られる三大ネットワーク、パンディット(政治コメンテーター)依存によって政治的立ち位置を商品化するケーブルテレビ、ワシントンで展開される政治とメディアの駆け引きと怪しげな距離感、こうした既存のジャーナリズムの機能を一部代替しつつある風刺・コメディの影響力、移民たちを繋ぎつつ集票マシーンや本国のスピーカーとしても機能し得る多様なエスニックメディア…そうした諸相を、リアルな実体験を交えて解説してくれます。

著者の言う通り「海外のメディアについて深く知ることは海外を深く知ることと表裏一体でもある」ならば、この本に書かれているような背景を知らず、NHKBS1あたりでたまたま見かけた報道を眺めているだけでは、その国や社会の事情を深く知ったとは言えないでしょう(これは私のことです)。また、著者自身もそうしているように、日本の特にテレビ報道との比較をする上でも示唆深い内容が散りばめられています。

アメリカ政治や社会を知る、日本のテレビメディアについて考えを深める。その両面において有益な一冊だと思います。