【目次】
「分からない」と言うことの大切さ
結婚、出産、育休、保育園、そして離婚。家族を巡る様々なイベントに関するデータを分析し、現時点で科学的に何をどこまで言えるのか、まとめた本です。
出生体重と子供の将来の知能や収入の関係、幼児教育による子供や社会への効果、離婚しやすい法制度の整備と女性の自殺数との関係など、興味深い知見を紹介してくれます。その上で「現時点での分析からは言えないこと、分からないこと」についても謙虚に言及されており、ややもすればセンセーショナルなタイトルの記事や本が巷に溢れる中で、「この説の真偽についてはまだよく分かっていません」と言うことの大切さを教えてくれる本でもあります。
注目の影に「自助」の風潮
以下はこの本に対するコメントではないので須賀、家庭生活や教育などの中長期的影響について、データに基づいて分析するという著作や研究はよく見かけるようになった気がします。
canarykanariiya.hatenadiary.jp
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もちろん、私自身が家庭を持ったことで、そうしたジャンルに興味を持つようになったというのはあるでしょう。その一方で、福祉国家や公立教育のプレゼンスが相対的に弱まり続け、現首相の言葉を借りれば「公助より自助」が求められる社会になってきていることが、家庭という私的領域のあり方の「効果」に関心が集まっている一因であるように見えなくもありません。
こうした研究成果を生かした社会政策や家庭教育の充実は進めていけばよいと思いま須賀、「知らない人は自分が悪い」的な格差の是認や再生産に結びついていかないことを願いたいです。