【目次】
「Ninja」ではない忍びの実像
戦国時代の膨大な史料を操りつつ、「忍び」の実像に迫る本です。
「Ninja」は既に海外でも通用する語彙となっていますが、そこから想起されるような超人間的な秘術を用いる存在としてではなく、実際にはどのような人たちで、どんな活動をしていたのかを丹念に追っていきます。
アウトローとしての忍び
彼らはもともと「悪党」などと呼ばれたアウトロー出身者であることが多く、それもあって諜報・索敵・待ち伏せ・城などの破壊工作・暗殺など多様な任務に当たっていました。大名たちは、彼らを召し抱えることによって、他国との戦争を優位に進めようとしたのみならず、「毒をもって毒を制す」ことで自国の治安維持を図ろうともした、と著者は指摘します。その背景にあるのが、中世における夜の世界の特殊性です。昼と夜では、適用される法からして異なっていたそうで、夜に忍びたちが暗躍したのもそうした事情によっていたといいます。
「釣り野伏」「捨てがまり」との関係は
こうして見ると、「忍法○○の術」を使いそうな「Ninja」との違いは明確にあると言えるでしょう。一方で、例えば忍者の活躍ぶりがゲーム展開を大きく左右した「信長の野望・将星録」あたりをやり込んでいると、意外と割と、しっくりくるイメージかもしれません。
一つ興味を持ったのは、東北関東で「草」、関東〜東海で「かまり」、西日本中心に「野伏」などと呼ばれたという伏兵と、島津家の戦法として名高い「釣り野伏」や「捨てがまり」との関係です。本書では触れられていませんが、語彙的に見ても、関係があると考えるのが自然でしょう。これらの戦法をどういった人々が考案し、遂行していったのか、気になるところですね。