幕末の四賢侯に数えられ、西郷隆盛らを登用した薩摩藩主・島津斉彬の伝記です。
大局観に優れた人物で、また人材育成や産業振興を進めた業績は、明治維新後の殖産興業のさきがけともされています。「暗君なし」と称された島津家の歴代当主の中でも、抜きんでた評価を与えられています。
その生涯を見ていくと、やや意外にも「政局」に強いタイプではなかったように思えます。藩主の座を巡るお由羅騒動についても、斉彬サイドの動きが誘発した側面が指摘されていますし、最終的に目的を果たした際も幕府の介入を求めています。著者も述べているような「ある問題を解決するために、上位権力の介入を求める」政治スタイルは、統制の難しいプレイヤーを引き入れてしまうという意味で諸刃の剣でもあったはずです。諸刃の剣も使いこなせるなら立派な武器だとは言えま須賀、その腕前が如何なるものであったかは、もう少し検証の時間が必要だったかもしれません。
斉彬の突然の死は、西郷ら同世代人を大いに嘆かせました。それのみならず、後世の歴史ファンから見ても、あと10年存命だったらどうなっていたか、興味をそそられる人物だと思います。