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取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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[レビュー]歴史から25年後を「予言」する/『大予言』(吉見俊哉)

 

大予言 「歴史の尺度」が示す未来 (集英社新書)

大予言 「歴史の尺度」が示す未来 (集英社新書)

 

歴史(の尺度)を通じて未来を考えることを目指す本です。もちろん予言書ではないです(笑)

人口学的に一世代にあたる25年、覇権国家の交代期間を指すとされる150年、「近代」など社会構造に関わる時間の単位としての500年を軸に、これまでの世界はどうであったか、そしてこれからはどのような歴史が展開されていきそうかを論じています。日本を中心に言えば、1870、1895、1920、1945、1970、1995といった年号が一定の時代を画しているという見解は、なんとなく理解できるものではないでしょうか。

ただ、この本が試みているのは、後出し的なつじつま合わせや歴史好きの分類ごっこではなく、そのものさしに意味を見出し、それを未来側に当ててみる作業です。一番わかりやすいのは、人口動態と絡めた分析でしょうか。ある多産多死の社会の近代化が進む際、多産少死の状態から少産少死に向かいます。その多産少死で人口が増え続ける時期はその社会に勢いがあり、例えばフランス革命も日本の高度成長もこの時期にあたるそうです。こうした人口ボーナスの時期を終え、少産少死の状態に「着地」した社会は、逆に急激な少子高齢化に苦しむことになる。これは日本や韓国はもちろん、中国や東南アジア諸国も迎える出来事であり、「アジアの世紀」が遠からず終わることも人口学的には予見されているのです。

何年か後のことは予測しづらいが、もっと先の未来はむしろ見通しがよくなる。著者は冒頭部分でそう述べます。確かにプロ野球でも、ある試合や三連戦の結果がどうなるかは予測しづらいで須賀、シーズン後にどのチームが優勝しているかについては、ある程度信頼できそうな予想がなされています。「数百年続いた近代が、今世紀末には終わりを迎える可能性がある」と言われてもなかなかピンときませんが、ある程度予測可能な未来に備えることは、個々人にとっても社会にとっても大事なことだと思いますし、それを見通すには、人文学的な知もバカにはならないということなのでしょう。

 

 

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