初代・伊藤博文から現職の安倍晋三までの歴代首相を、リーダーシップに注目しながら紹介した本です。
編者の言う通り、執筆者によって書きぶりの違いはかなりありま須賀、総じて戦前については、歴史を追うというより人柄や首相としてのありようが描かれていて興味深かったです。一方で時代が下れば下るほど、歴史的な評価を定めにくいということなので生姜、事績の羅列が増えていったような印象があります。
一つだけ全体的な感想を挙げるとすれば、ある首相の評価は、彼の知見や人格的魅力といった個人的特性のみならず、むしろ在任した時世や政治状況に大きく影響されるのだなということです。
日本が戦争へと突き進みつつある時期の若槻礼次郎や広田弘毅、政治改革と経済危機に揺れた1990年代の羽田孜、橋本龍太郎らは、その時世に適切に対応できなかったとの評価がなされています。また、原敬、小泉純一郎という比較的安定した政権の後継は、いずれもその「後遺症」に苦労しています。これは「ポスト安倍」時代の見通しに重要な示唆を与えるでしょう。
さらに時間を経たのちに、次の首相の項目を付け加えていくのはもちろん、既に書かれた首相の章をどんどん書き換えていってほしい本です。