日本統治下の朝鮮 - 統計と実証研究は何を語るか (中公新書 2482)
- 作者: 木村光彦
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2018/04/18
- メディア: 新書
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サブタイトルが「統計と実証研究は何を語るか」となっているように、統計データを駆使しつつ、植民地時代に農業・鉱工業ともに大規模化していったことが指摘されています。一方で、戦時中は北部を中心に軍需工場が多く建設されるなど、戦争経済への包摂も進んだことが述べられています。
客観的事実の紹介として見ていくと、やはり注目すべきは鉱工業発展が北部中心で進んだ点でしょう。日本列島(いわゆる内地)には乏しい鉱物資源に恵まれていたことから、日窒(後のチッソ)系列による興南の化学コンビナートや鴨緑江の水豊ダム建設など、戦争経済に直結する重化学工業の拠点はむしろ北に集まっていました。そうした朝鮮半島における各産業の集積度合いが紹介されており、その点勉強になりました。
ただ、データの分析で危なっかしいものが散見された印象も否めません。身長データについて循環論法っぽい扱いをしていたり、最後の方にあまり意味のなさげな数字を列挙していたりしており、そうした箇所は立論に難があるかなあと感じました。
まあ基本的には、「日本植民地時代の朝鮮は収奪されたいたように言われているけど、本当にそうだったのかを客観的に検証しよう」という本だと理解しています。著者としては一方的な収奪がなされたわけではないということを言いたいようで須賀、日本の戦争遂行のために重化学系の工場をガンガン建てられている時点で、それは遺産や恩恵というよりは収奪に近いような気がするんですけども…