叢書 東アジアの近現代史 第3巻 日本人の朝鮮観はいかにして形成されたか (叢書東アジアの近現代史)
- 作者: 池内敏
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/10/31
- メディア: 単行本
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▽「大君」呼称にまつわる経緯▽漂流民の相互送還(さらには済州島からの漂流民の出身地詐称)▽文物の輸出入▽竹島・鬱陵島に関するやり取りの経緯▽差別用語とされる「鮮人」といった用語が現れた過程―などを、徹底して史料に即しながら紹介しています。そしてその作業を一般化した先に、「朝鮮観」が忘却と再発見の繰り返しであり、再発見時点の環境がその朝鮮観に独特の意味付けを与えていることを見出しています。
この本の一番の醍醐味は、やはり一つ一つの史料を読み解いていく営みにあるでしょう。『竹島』(池内敏)にもあるような領土問題に直結する部分ももちろんなので須賀、特に興味深かったのが済州島漂流民でしたね。彼らの説明の時期的変遷を追っていくことで、「済州島民は、漂流先の外国で同島出身者と知れれば殺されるのではと考えていた」→「それは海上交通の難所である同島周辺での外国人遭難者は、島民によって虐殺されたのだと(日本人などの外国人に)誤解されていると島民は思いこんでおり、その報復を恐れていたからだ」→「それはこの年の遭難事件の後で、その噂が島民に流布したとみられる」…というように、言わば謎解きをしてしまっている。詰め方の部分でちょっと疑問点はありましたが、この手法は鮮やかでした。
テーマが多様なだけに、一冊の本としての結論は抽象的にならざるを得ませんでしたが、抽象的なことこそ史料に即して考え進めていく、その重要さを教えてくれます。