かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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『FEAR 恐怖の男』(ボブ・ウッドワード)

 

FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実

FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実

 

米国で最も有名、と言っていいはずの記者による、トランプ政権への取材成果です。

米韓自由貿易協定の破棄という極めて影響の大きい決定を、秘書官らが大統領の机から書類を隠すことで阻止していたという冒頭のエピソードが、この政権のあり方に関する全てを物語っていると言えま生姜、一応整理すると、以下のようになるかと思います。

原書の副題は「Trump in the White House」で須賀、著者が指摘する問題点は、トランプとホワイトハウスの双方にあります(もちろんこれらは連関しています)。一つ目はトランプの特質です。重要会議後に出席者と話したホワイトハウス高官は、このようなメモを書き残したそうです。

「大統領の上級顧問、ことに国家安全保障チームのメンバーは、大統領の不安定な性格、問題に対する無知、学習能力の欠如、危険なものの見方に、極度の懸念を抱いている」

無知や危険なものの見方によって「とんでもないことを決めようとすること」*1、しかしその不安定な性格によって「まともに決められないこと」がトランプ大統領の特質であるようです。

もう一点は、ホワイトハウスの機能不全です。同じく本書では、このように指摘されています。

「トランプは、一人か二人か三人だけしか関与させずに決定を下すことが多かった。意思決定と調整のプロセスがなかった。その状況は、混沌と無秩序というような言葉ではいい足りない。要するに、なんでもありだった」

ある問題について、そもそも意思決定のラインにいないはずの人間が、裏で大統領と直取引をして物事を決めてしまうことが続くと、本来そのラインで一定の関与が出来る人までが、「外野」の介入を防ごうと手続き無視に走るようになってしまいました。冒頭の米韓自由貿易協定の例も、その政策的な結果の善し悪しはともかくその例と言えるでしょう。つまり、雪崩を打つようにホワイトハウスの意思決定プロセスが崩壊してしまった、ということを指摘しているのです。また、重要閣僚の交代が多いことも政策形成過程の安定を欠く要因と言えるでしょう。

このように意思決定過程が制度化されていない政権と(たとえ同盟国といえ、いや、同盟国だからこそ)、どう対峙していくのかは難しい問題だと思います。有力者のうち誰かしらを、何らかの方法で味方につけるというのが手っ取り早そうで須賀、そういうやり方が不正や汚職を生みやすいのは言うまでもありません。

そして何よりこれが、今のアメリカ合衆国の政治風景なのです。

 

いつもありがとうございます!

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*1:ただこれはトランプの立場からすれば、それこそヒラリーらを含む米国内のエスタブリッシュメントにとって「とんでもないこと」なのであって、彼がそれを確信犯的に行なっている側面は否めません