- 作者: 池内敏
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2016/01/22
- メディア: 新書
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そうなってくると両政府の主張はメッタ打ちにされてしまうわけで須賀、では著者として竹島領有権問題をどう結論付けているかというと、「日本側・韓国側の主張には、どちらかが一方的に有利だというほどの大きな格差はない。あえて言えば、竹島を日本領にしたとする公文書が日本側にはあるが、韓国側にはそうした類の公文書がない、というところだろうか」と、言ってしまえば「両方とも負け」に近い判断を下しています。
- 作者: 酒井啓亘,寺谷広司,西村弓,濱本正太郎
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2011/12/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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まず、第二次世界大戦に敗れた日本が、旧植民地を放棄するなどして国際社会に復帰することを国際法上画したサンフランシスコ平和条約において、竹島が日本領として扱われていることは明確です(「放棄する島に竹島も入れるべきだ」という韓国側の主張は却下されています)。また、その際出されたラスク書簡が前提とする1905年の日本編入についても、先述の「石島」が竹島を意味しないなら竹島はどの国家領域にも帰属しない*2「無主地」とせざるを得ず、決定方式を含めて形式的には無主地先占が成り立つとは一応言えるのではないでしょうか。まあ著者が言うように、編入のきっかけとなった貸し下げ願いの提出者も最初は韓国領だと思っていたくらい微妙な部分ではあり、事前・事後ともに韓国側に通告しなかった点などはやり口として不誠実ですし、編入自体も日露戦争中、日本が韓国政府の権限を次々に制約していく時期に行われた*3のは事実であり、そこも大きな問題ではあるんですけどね。
最後に付けた注の部分は不満で須賀、全体としては論理明快で分かりやすい本だと思います。実は実物を見たこともあったりなんかして、島の様子などもイメージしやすいというか、ちょっと懐かしかったです。
*1:細々とながら時間をかけて読んだのでこちら単独の感想も少し。論争的な部分をしっかり紹介してくれている点で「覚えるんじゃなくて理解してね」という執筆者の意図にも資するなあと感じながら読み進めましたが、もっと言えば世界政府的なものが存在せず、さまざまな法を言わば有権的に解釈・適用して遵守を義務付けるアクターが存在しない以上、この教科書が、ということ以上に国際法という分野そのものがより論争的なものでもあるのでしょうね。法律の他の分野について、感覚的に述べるだけの素養はないんで須賀www
*2:元禄以降領有権を否定している日本側にも、この時点ではもちろん帰属していません。編入の閣議決定を読めば、「これから領有する」というスタンスが非常に明確です
*3:著者はこの論点について、主唱者に遠慮して深くは触れなかったとあとがきで述べています。それがその主唱者に対して誠実な態度なのかはよく分かりませんが、少なくとも読者に対しては不誠実な態度だと思います