- 作者: 佐々木毅
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2012/11/16
- メディア: 単行本
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ありがちな理論や概念の紹介中心の概説書とは一味違って、そうしたものが政治の見方や政治的対立の流れの中にあることを重視した記述になっており(各論)、そうした位置付けを理解しながら読むことができました。極めて大雑把に言うと、フォーディズム以降の大量生産・消費社会の中、一国の枠の中で成長のパイを福祉や利権として分配していればよかった第二次世界大戦〜石油危機前後(「黄金の30年」)はリベラリズムの時代で、例えば包括政党は全盛期でマニフェストなんて必要なかったし、コーポラティズムももてはやされたが、その崩壊やグローバル化を経て参加民主主義と新保守主義という対立的な処方箋が示されるようになり、またエスニシティの問題も噴出するようになった…。そういう形で、各論を横串で刺すような体験は興味深かったです。
ただ原論の方は、さほど論理的に複雑な議論は展開していないはずなのに心の折れそうなページが続きます。こんなことを言うと著者に「お前に政治についての思考力がないからだ」と叱られてしまうのかもしれませんが、冒頭で示唆したかったのはその辺の事情です。