講談の名手としても名高かった
漱石の講演集です。今からで言うとちょうど100年前に行われたものなんで須賀、「社会の専門化・タコ壺化が進み、専門バカが増えるだろう」(道楽と職業)といった現代を予見するかのような記述も多く、その先見性には感心させられます。実は、一読してあまり驚くようなことが書かれていなかったというのが率直な感想で、ややレビューを書くのも苦労しているので須賀、それこそ「一足飛びのような日本の近代化は上滑りだ」(
現代日本の開化)とか「個性を発揮する者は他人の個性に配慮せねばならないし、金や権力がある者はその責任や義務を認識すべきだ」(私の
個人主義)の如き指摘は今聞いても何ら違和感がないわけで、それはさっき述べたような先見性あるいは普遍性のなせる業なのか、あるいは彼の知的発言力・影響力がそうさせているのか判じかねる部分があるほどです。
…と言ってお茶を濁そうとしているわけで須賀(笑)、
学習院大学で「若いうちは興味のあることに突き進め!」(同上)と熱く語っていたのはちょっと意外な感じはしましたかね。私ももう若くはないんですけど、勇気をもらった気がします。