現場を離れて久しい新聞記者のブログ。 読んだ本の紹介や旅行記(北朝鮮竹島イランなど)が中心です。 ブログランキング・にほんブログ村へ

『宰相A』(田中慎弥)

宰相A

宰相A

この小説は間違いなくまだ読んでいない人にオチを言ってはいけない種類のそれなので、うまいことちょっとだけ感想を述べることを目指します。
作家Tが迷い込んだ「別の日本」はアメリカと一緒に世界中でガンガン戦争をしていて、Tは言いがかりのような理由で反体制派のリーダーに祭り上げられる…と言うとかなり荒唐無稽な筋書きのように聞こえるかもしれませんが、実はこれ、読んでいくとそんなレベルではなくなってきます(笑) ストーリー的にもエログロ的にもかなりメチャクチャな話です。
ただまぁ、それを作家の妄想想像力の一言で片付けるわけにもいきませんで、著者自身が物語にかなりの伏線を張っているのは容易に察せられますし、彼の描く「別の日本」は今の日本のある側面を深くえぐっているようにも見えます。もしこの小説が読者への警句を含んでいるとすれば「日本も近未来にはこうなるぞ」ではなく、「オレには今の日本はこう見えるぞ」であるようにも思えるのです。
それこそ「宰相A」がアメリカで演説するさまを今朝テレビで見ましたが、そのカラ元気は小説の陰鬱な感じと一見対照的だったのに、何だかとてもげんなりしてしまいました。