かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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『現代語訳 信長公記』 (太田牛一)

現代語訳 信長公記 (新人物文庫)

現代語訳 信長公記 (新人物文庫)

言わずと知れた織田信長の一代記です。マイナー武将(失礼)の名前の羅列や行事での各人の服装の描写など、読み飛ばしたい衝動に負けそうになった(実際負けた)箇所もありましたが、そこは現代語訳でもありますし、すらすらページをめくることができました。
話の本筋の部分はもはや珍しくもありませんけれども、信長が鷹狩りに行ってどんな遊びをしていたかとか、留守中に「鬼の居ぬ間に洗濯」していた安土城の女房らを絞め上げたとか、妖しげなエロ坊主を処刑したとか、当時も残っていた盟神探湯めいた裁定法に(あの信長が!)加担していたとか、兵糧攻めで餓死寸前だった鳥取城の城兵らがかわいそうだったので食べ物を与えたら逆に食べ過ぎて頓死する者が続出したとか、そういった当時の世相や風俗を感じさせるような話がちりばめられていたことの方が面白かったです*1。こうしたことは当代の人にとっては日常の風景だったり、正統派の人情話であるかあるいはちょっと変わった話だったりするくらいなので生姜、それが500年近く後になってみると当時を知る貴重な資料になるでしょうし、今回私がしたように、その時々の価値観や信長観で当時を偲ぶという営みは、読んでいる時/主体に固有のものであると言うことができると思います。そうやって考えていくと、時代を経てあるテキストが残っていき、読まれていくことって面白いですよね。
さて、最後に一つだけ。いくら「現代語訳」とはいえ、「是非に及ばず」が「やむをえぬ」になってしまってはちょっと…(笑)

*1:特に最後のはあまり笑えない話ではありま須賀