現場を離れて久しい新聞記者のブログ。 読んだ本の紹介や旅行記(北朝鮮竹島イランなど)が中心です。 

『「育休世代」のジレンマ』(中野円佳)

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

いい大学を出ていい会社に総合職として入りバリバリ働いていた女性が、出産を経てなぜ辞めざるを得ないのか。実際の退職者や、似たような環境にありながら仕事を継続している女性15人への丹念な聞き取りを通じ、その置かれた状況や下した判断を明らかにすることでその問いに答えようとする本です。命題の一般性に対して手法が個別的に見えるということか、「15人に聞いただけで何が分かるんだ」という声もあるやに聞きましたが、まずもって上記の問いに答え得るのは決して統計的調査ではなく、こうした質的調査だということにご納得いただけるだけの聞き取りには私が思うになっていますし、そもそもその問い自体の設定もロジカルに行われています*1
一方で、そういう堅苦しい話を抜きにしても「なるほど、そういうことを考えるのね」とか、人によっては「あーそれわかる」とか思えるだろう語りが多く含まれていますので、純粋に出産・育休復帰というステージに直面した働く女性が置かれる状況を知る、という意味でも非常に興味深い一冊だと思います。恥ずかしながら私自身、(長男が生まれる前だったと思いま須賀)友人の奥さんが似たようなステージで仕事を辞めたと聞いて「もったいないなあ、やっぱり大変なのかなあ」と思った程度の認識しか持ち合わせていなかったもので、非常に勉強になりましたです。確かに今私が勤めている新聞社にも、「マミートラック」は厳然としてありますものね。
この場で冒頭の問いへの結論を言ってしまうと、そういう「バリキャリ」の女性は「男女平等に見える教育課程で男性中心主義的な競争への意欲を駆り立てられることで、(復帰後に仕事を)継続するための環境や資源を積極的に選択できず、退職を迫られるから」というのが著者の答えで、逆に続けられている女性についてもそうした環境や資源を獲得できていたり、バリバリ働く(ことでキャリアアップor自己実現する)ことと育児との折り合いを自分の中でつけることで状況に適応していたりするので、「会社にぶら下がっている」と見做されやすい、と著者は指摘しています。15人それぞれのライフストーリーにある複合的な要因を読み解きながらこうした結論を得る。その多角的な攻めとその後のまとめ上げ方は読み応えがありましたが、正直言って女子校だと云々といった生育歴的な部分にあまりピンとこないことがありました。興味深いというか、耳目を集めるテーゼではあって面白いとは思うので須賀、あくまでも15人を母数とした質的な分析であるという意味で、その点についてももうちょっといろいろ材料が欲しかったかなあという気がしました。まあ、私自身女子校とは対極の場所から出てきたのでイメージしづらいってこともあるのかもしれませんけどね。
 
…とかなんとか言っておいて、一番の感想は「あぁ、本当にこの人らしい書きっぷりだな」ということだったりします。

*1:まあ、論文ですからねw