昔話の主要な登場人物はピンで現れ、場面は一対一で構成される。出てくる色は原色である。リアルには語らない。同じ場面は同じ言葉で語る。三回の繰り返しを語る。若者の成長や変化を語る。ハッピーエンドは主人公の「身の安全」「富の獲得」「結婚」のどれか―。洋の東西を問わず昔話が持っている法則性や、そのメッセージについて、昔話研究者の著者が紹介する本です。「昔話に法則なんてあるのか」とお思いの方も多いでしょうし、私も最初はそう思っていたので須賀、代々口伝いで語り継がれてきているという性質上、そのための特定の法則を持つようになることも不思議なことではありません。それぞれの話の解釈はいろいろといったところで、著者のそれに全て納得できたわけでもありませんが、「昔話とは子どもの成長を願うものだ」という考え方は印象的でした。
あと恥ずかしながら、ディズニーの「白雪姫」や「シンデレラ」が、もとの
グリム童話とかなり違っているというのは知りませんでした。まあ著者は「ディズニーの改変は三回繰り返しのリズムを破壊している!」と批判的なんですけどね。
著者の講演を聴く機会があって、興味を持った一冊。ちなみに著者は、指揮者の
小澤征爾さんのお兄さんです。