かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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日曜日の昼にNHKBS1でやってたウクライナとロシアに関する特集番組

を、昨日だったかに録画で見ました。もともとは2012年にフランスで放送されたものだとかで、もちろんヤヌコビッチが政権を追われたとか、クリミアがロシアに併合されたとかの話は出てこないので須賀、「帝国」への郷愁を捨てきれないロシアと、オレンジ革命を経ても混乱が続くウクライナの双方の歩みから、今挙げたような「未来」を照射するような2本立てになっており、いいタイミングでいい特集をやるなあと素直に思いました。
ロシアの方の番組では、最後にロシア版北一輝というか何というか、ちょっと怪しげな思想家(?)を登場させて「ロシア帝国復興への陰謀」的な危機感を煽って終わるという微妙な(少なくとも私は好きではない)オチ。個人的には、あまりプーチン政権がロマノフ朝ソ連に続く第三の帝国である/あろうとしているかどうかのレッテル張りの問題に終始しても仕方がない気がしてきています。その点では『ロシア新戦略―ユーラシアの大変動を読み解く』(ドミートリー・トレーニン) みたいな議論の方が有益だと思いますし、一連のロシアの挙動を見ても、事態はまだその射程から外れたところまでは行っていないんじゃないかという気がします。
ウクライナの方は特に勉強になりました。日本の新聞紙面をも賑わせたオレンジ革命から10年弱の政治過程を踏まえながら、そもそもの問題は新興財閥「オリガルヒ」らと結託した勢力らの癒着や汚職であり、さらには日本の民主党政権と重ねたくなるようなオレンジ革命後の不安定な政治運営や、もちろんヤヌコビッチも含めた政治的リーダーたちの不定見によるものであることを克明に描き出しています。つまり、親ロシアか反ロシアかがウクライナで争われてい全てではなく、街頭に出た市民の政治的不満もそういう一次元の物差しで理解すべきではない、ということを示唆しているように思えるのです。
とはいえ、いかに過去の経緯がそうであれ、現在進行しているのは「超大国アメリカを軸とする一強多弱」というだんだん怪しく見えてきた国際秩序の看板が、場合によってはついに音を立てて割れてしまいかねないという国際政治の重要局面です。2、3日前の毎日新聞の夕刊だかのコラムが、先だってのオバマ大統領のアジア歴訪を「『傘がない』の声に『行かなくちゃ』」なんて風刺していましたが、そもそも地球全体を覆う傘があるんじゃないかと信じられていた時代というのは、後から振り返るとかなり特異なものに見えるのかもしれませんね。