- 作者: 石井良助
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/07/12
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実力で武家のトップに立ったはずの徳川幕府が、自他共に「天皇から政権の委託を受けた存在」とみなされるようになっていく過程など、様々な史料を駆使した立論に納得させられる部分も多かったので須賀、一つ気になったのは「伝統」についてでした。著者は、不親政がまさしく卑弥呼の時代から続く伝統であると何度も繰り返しているので須賀、それはやや本質主義的な*2見方と言わざるを得ない気がします。これは邪馬台国と天皇との関係についての見解*3にも関わってくる話でもあるので生姜、「天皇には不親政の伝統がある」というのと「天皇は本質的に不親政である」というのは同義ではなく、むしろ伝統というのは、江戸時代の鎖国がそうである*4ように、無意識に徐々に形成されていって、それが何らかの理由で意識に上ったある時、初めて伝統なのだと認識される性質のものだという方が実情に近いと思うのです。その前提を採れば、天皇不親政という伝統は、もとはと言えばより偶発的な諸条件によって形成されてきたものと言うことができ、さらにそれを踏まえて著者の成果を解釈するならば、武列天皇の後に越前から継体天皇を迎えたことが、世界史上の他の王権と条件を分かった重要なきっかけの一つだったと私は考えています。
逆説的かもしれませんが、この本での丹念な議論こそ、(天皇不親政の)伝統を構成主義的*5に理解していくメリットを示しているようにすら私には思えます。ちなみに、解説を書いている本郷和人氏が
- 作者: 本郷和人
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/11/01
- メディア: 新書
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