- 作者: 船橋洋一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/10
- メディア: 単行本
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この時期、「朝鮮半島第二次核危機」をマネジメントする枠組みの中心にあったのは南北米中日ロの六者協議でした。この本では、その六者それぞれからしたところのこの問題の意味合いや思惑といったところを章立てして論じており*1、この間の推移をみる上での複眼的視点を得ることができます。一方で、同じ一連の出来事に関する各国の立場や内実をそれぞれ紹介しているわけで、事実関係を追うという意味ではどうしても重複が多くなってしまいま須賀、まあそこはある程度トレードオフとして受けねばならないでしょう。
その中では、米政府部内でのいわゆるネオコンと国務省関与派などの対立による外交政策の迷走ぶりや、よく(まさに今も)「北朝鮮をかばっている」と言われがちな中国が実際に何を考え、望み、どのくらい「かばって」いると言えるのか*2などなど、非常に読み応えのある個所も多かったので須賀、一つ言うなら、六者協議の成果が崩れ去る直接的な重要契機とも言えるアメリカによる金融制裁について、もう少し詳しく知りたかったですかね。
交渉当事者の構想などとして何度か出てくるように、六者協議は「朝鮮半島第二次核危機」を話し合う場でありながら、朝鮮半島問題全般を、もっと言えば冷戦の構造が残存し、地域安全保障の枠組みが脆弱な東北アジア全体のあり方を話し合う場にもなり得るものでした/です。確かにこの本が書かれた時期から、事態はさらに悪化していると言わざるを得ないのが現状で須賀、この問題を「核兵器とミサイルを振り回す独裁者のおもり」としてではなく、「今後一層不安定さを増すこの地域の過去を解きほぐし、全ての国がともに安全を享受していくための方策の模索」という視点で見ることの重要性は決して薄れていないでしょうし、むしろより難局にあるからこそ、強調すべきことであるようにも思います。