かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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『引き裂かれた約束 全告白・大将同志への伝言』(藤本健二)

引き裂かれた約束 全告白・大将同志への伝言

引き裂かれた約束 全告白・大将同志への伝言

金正日の料理人」でおなじみ藤本健二さん(仮名)が、11年ぶりの訪朝で金正恩第一書記や自らの家族と再会を果たすものの、日本政府高官との接触のため時期をずらした再訪朝は北朝鮮側に拒まれてしまった―その経過について書かれた本です。今の一文でこの本のあらすじはほとんど説明してしまったので須賀、北朝鮮に興味がある人はそれでも読む価値はあると思います。『金正日の料理人』との重複も多いですけどね。
ただ一つだけ踏まえておく必要があるのは、この本自体が、著者から金正恩第一書記や北朝鮮当局者に向けた「伝言」あるいは「詫び証文」であるということです。まずもってこの本の記述の中に、そういった人々に読まれることを前提にしていることが明記されていますし、彼はこの本を書いている時点では、一度断られた再訪朝の機会を願い待ち望んでいる立場です。「自分は一度共和国(北朝鮮)を裏切った人間だ。申し訳ない」「金正恩大将は素晴らしいリーダーだ」「久々の平壌の発展ぶりに驚いた」…。この本には、彼の以前の著作と比べても驚くくらい、そうした趣旨の内容が書き連ねられていま須賀、それはこの「平壌からの視線」を十二分に意識したものであるからだと言えるでしょう。もしその度量でもって、著者を(彼が望むように)日朝の懸け橋にせんとするだけの政治家が日本の政界にいるなら、恐らく避けえない日朝関係の構築のためにも、著者のこの続きのストーリーに是非期待したいと思います。