かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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東経52度の旅―イラン・ラマダン紀行五日目 シーラーズへバスの旅

さよなら、エスファハーン

思いがけない出会いもあり、あれこれ楽しんだエスファハーンの街。しゃぶりつくしたとはまだ到底言えないで生姜、限られた旅程です、ずっとここにとどまることはできません。この日はエスファハーンを発ちさらに南下。南部ファールス州の州都・シーラーズを目指します。シーラーズそのものの日本での知名度はそこまで高くないかもしれませんが、アケメネス朝ペルシャの巨大都市遺跡・ペルセポリスへの起点、と言えば立ち寄る意味も理解していただけるかもしれません。バスで8時間かかるそうなので移動メインですかね。

そんなに顔を近づけなくてもw

ゆっくり9時前に起きて1時間ほどでチェックアウト。最後にまたエマーム広場を拝もうかちょっと悩みましたが、何時のバスに乗れるのかもわかりませんのでさすがに自重します。シーラーズ方面の高速バスが発着する南バスターミナルへは、宿の目の前に停まる路線バスで向かいます。行き先を確認して乗り込むと、近くの席の若い男性が私を興味深そうに眺め、いろいろと話しかけてきます。「ターミナルは終点だよ」「ここがエスファハーン大学だよ」「ここではメトロを造っているんだ」。さながらガイドのように、車窓の景色を解説してくれます。そしてさらに「どこに行くの?」「なんで1人なの?」とあれこれ尋ねてきます。それ自体は全く嫌ではないので須賀、なぜかこの人、話しかけるときにびっくりするぐらい顔を近づけてくるのでいちいち驚いてしまいました。
彼は「この辺が僕の家なんだ」と終点間近で降車。ターミナルに降り立ってみると、そこは一昨日の夜にRさんが案内してくれた夜景スポットだったのでした。バスはチケットで乗るものだったようで須賀、知らずに乗ってしまった*1のでキャッシュで1000R支払いました。これでも払いすぎなのです。

バスを待つこと…

時刻は午前10時半。バスに同乗していた別の男性の助けも借りて、シーラーズ行きのチケット(65000R)を押さえることができました。しかしこのバス、発車が午後1時45分。3時間ちょっとここで待ちぼうけです。エマーム広場に寄ってちょうどいいくらいだったのかもしれませんが、それは結果論です。
さあ何をしようか。とりあえずネットカフェはあったのでここで時間を潰しましょう。1時間ちょっとの時間と、14000Rを消費することができました。飽きたので売店で飲み物を購入します。水をくれといったのに、出て来たのは9000Rの炭酸入りレモネード。しかしこれがレモンの皮の風味というか、レモンそのものに近いような味わいでおいしかったのです。

ちなみにご興味ないかもしれませんで須賀、背景はバスターミナル内の風景です。
その後はターミナル内や屋外のベンチで読書。

屋外では周囲の皆さんと、「シーラーズに行くの?このテヘラン行きのバスが出たら来るから待っていれば大丈夫だよ」「オレの名前は△○☆っていうんだけど、日本語で書いてみてくれないか」など和気あいあい。カタカナで書いて差し上げると、満足げなご様子でした。出発ギリギリまでシーラーズ行きが来ずに焦りもしましたが、そこも近くの人がバスカウンターに確認に行ってくれたりと最後まで面倒を見てもらいました。

やったーお菓子だ!

結局バスは遅れが響き、午後2時の発車。こんなうれしいサービス
*2
も楽しみながら、読書や昼寝をして時間を過ごしていました。たまーに車窓の景色なんかも眺めていたので須賀、どの車も車線を守るという感覚がないかのような運転で、見ているこっちがヒヤヒヤさせられます。

シーラーズの夜散歩

明日の切符を確保

出発から約6時間。(ガイドブックの)見込みより2時間早くシーラーズのバスターミナルに到着します。ここではまず、出口戦略でしょう。ペルセポリスと合わせて明日の夕方まで滞在し、テヘラン行きの夜行バスに乗れれば明後日の昼にはテヘランに着くだろう。さすればテヘランもちょっと覗けて、その翌日の飛行機には問題なく間に合うはず。そんな戦略に基づいて、明日の夜発のテヘラン行きバスの切符を押さえます。お値段は13万Rと安くはないで須賀、一泊できるわけですからね。離れる前に念のため、ペルシャ語で書かれた出発日時を確認して…ちょ、待てよ!! これ、今日の切符じゃないですか。購入したカウンターに駆け寄って、「明日の切符って言ったじゃないか」と抗議します。カウンターの男性は全く反省を感じさせない素振りで、ちゃんと翌日発の切符を発行してくれました。

にぎわう中心部へ

このターミナルからシーラーズ中心部までは約1.5キロ。歩いていくという選択肢もあったので須賀、なるべく早く宿を取っておきたかったので嫌いなタクシーをお願いすることに。1万Rの約束で乗せてもらったので須賀、降りるときにお釣りがなくて2万R札を出したら「Thank you」とか言ってそのままガメようとしていました。だから海外でタクシーにはあまり乗りたくないのです。
中心部は結構賑やか。映画館が立ち並んでいたのが印象的でした。

お目当てだったササンホテルには午後9時前にチェックイン。これまたムハンマドと名乗ったオーナーは、紳士的かつフレンドリーなやせ型の男性です。歳は50代くらいでしょうか。彼は「ペルセポリスに行くなら」と30万Rの日帰りツアーの話を始めたので須賀、近くの町までバスで行く方法もあると聞いていたのでとりあえず保留させてもらいました。早速その話を振ってきたところを見ると、やはりペルセポリス目当てでシーラーズの宿に泊まる観光客も多いのでしょう。

一団に混じって記念撮影

さて、荷物をおいて散歩にでも出かけましょう。「夜だから気をつけて」というムハンマドさんの言葉にちょっと気を引き締めなおして、夕飯を食べる場所を物色しながらの街歩きを開始します。

賑やかなザンド通りを東進し、城塞の見えるショハダー広場を通りすぎると、車の入れない歩行者天国のようなエリアに入ります。そこでは多くの若者やおじさんたちが、水タバコをふかしながら会話を楽しんでいるようです。この風景を写真に収めようとシャッターを切っていると、若者の一団が声をかけてきます。
このシチュエーションが日本で起きたものなら「なに撮ってんねんワレ!」的な展開になること請け合いで須賀、幸いなことにここはイランはシーラーズです。おなじみの記念撮影モードに突入し、彼ら

に混じって私も一緒に写真を撮ってもらいました。センターの彼がカメラマンをやってくれ、皆さんとてもいい笑顔を見せてくだすっているので須賀、ある事情でここには公開できません。水タバコもちょっと吸わせてもらったので須賀、やはり非喫煙者の私にも吸いやすく、おいしかったです。
「オレたちも撮ってくれよ」とお2人。

今気付きましたがホンダのバイクですね。
全体的な雰囲気をご紹介するのを忘れていましたが、

とまあ、こんな風景でございました。ちなみに左側の男性の足元に光っているのは火で、どうやらグルグル回すことで火勢を強めている様子でした。水タバコにでも使うのでしょうか。

夕食はハンバーガ

またもや町の人々に遊んでもらったわけで須賀、さすがにこの時間から観光するのは難しそうです。そろそろ夕食でもと思いピザ屋に入ります。注文はこちら。

これで25000Rでした。
実はこの店、ガイドブックにも載っていた店で、帰りに店主と思しきおじさんに「あんた日本人でしょ?」と嬉しげにそのガイドブックのコピーを示されました。正直ガイドブックに載っていたからといってわざわざ尋ねるような性質の店でもなく、たまたまザンド通りにあったということに尽きるので須賀、英語のメニューがあったという点でも便利な店であることは確かです。
帰り道の露店もそろそろ店じまいなのでしょうか。行きより売り子さんの威勢がいいようです。

日帰りツアーの「商談」成立

宿に戻ったのは10時過ぎ。フロントを通って部屋に戻ろうとすると、ムハンマドさんがチャイを薦めてきます。ちょうどいい、こちらも話があったところです。明日のペルセポリス行きについてチャイを飲みながら商談し、結局ちょっとだけまけてもらって、28万Rで明日のツアーをお願いすることにしました。理由はリスク回避です。ここからペルセポリスまでは約60キロ。明日の夜というタイムリミットがある中、路線バスで途中の街に行ってからタクシーに乗る×2という方法を選択するのはややリスクが高い。多少高くついても、昼過ぎまでに帰ってこられるならシーラーズの観光もできるではないか。そう考えました。お代は今日の宿代24万Rとともに支払いました、といってもここでリアル切れを起こし、100ドルを100万Rに両替していただきました。
商談成立後もチャイのおかわりとアンズ(?)の実をじゃんじゃかいただきながら、ムハンマドさんと雑談をします。昨日のSさんも電気代のことをぼやいていましたが、「給料に比べて物価が高い」というのは彼も感じていることのようです。

あれっ、部屋のカギは?

11時を過ぎると、「明日は7時半発だからもうおやすみなさい」と、部屋に戻ることになりました。預けたはずのルームキーをフロントで受け取ろうとすると、どうやらそれが見当たらないようです。ムハンマドさんは「持ってないの?」と私がカバンをひっくり返し、ズボンのポケットをぱんぱん叩く動作を見つめていましたが、そのどこにもありません。私が「預けたと思うんだけど…」と首をかしげながら言うと、彼は初めからそう思っていたのか「もしかしたら道に落としてしまったのかもしれないね。まあ心配しなくていいよ」と優しげに声をかけ、マスターキーで部屋を開けてくれます。心の中で「そんなことないよー」と思いながらも、もう一度部屋でカバンの中を探しま須賀、やっぱりありません。部屋の中に置きっぱなしにしていたというオチもありませんでした。まあいっか、とりあえずたまった洗濯をしとかなきゃな…と適当に割り切ったその直後、部屋をムハンマドさんが訪れます。
ムハンマド「カギはありました。あなたのために見つけてきましたよ」
私「ありがとう。で、どこにあったんですか?」
ムハンマド「オフィス」
私「なるほど(笑)」
私はそれ以上何も言いませんでしたが、「ほら見ろ預けてたじゃないか」と顔に書いてあったらしく、ちょっとばつの悪そうなムハンマドさんは私に手を差し出しました。私は顔に書いてあった文字をとっさに消して、笑顔でその手を握り返しました。

*1:行きはおごってもらった

*2:お菓子箱です