かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

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何ヶ月かけて読んだんだろうw

東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)

東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)

今をときめく若手論客である二人が、東京の風景や彼ら自身の東京体験から出発し、都市論や現代社会論など、幅広い議論(雑談?w)を展開している本です。都市をめぐる具体的なトピックスと抽象的な議論がバランスよく配されていて、飽きずに読める一冊と言えるのではないでしょうか。その反面、社会のセキュリティ化の問題点など、もっと突っ込んで議論してほしかった箇所もありますけどね。
また、ちょうど私自身が街に出て、街の話題を探したりすることを始めた時期とも重なったせいか「郊外のジャスコ化」や「エスニックタウンの不可視化」など、街を眺める視座として興味深いものを得ることができたように思います。あるいは新聞記事という形で彼らの議論を検証できたら面白いかもしれませんね、具体的にどういう形に落とし込むかが難しいんでしょうけど…
あとよかったと思うのは、読み進めるにつれて二人の立ち位置の違いが表れてきたことでしょうか。東浩紀が人間の動物としてのあり方を重視して都市を考えたのに対して、KTD*1はその「人間工学」のイデオロギー性を見ようとする。その差異が徐々に際立つことで、対談全体もしまりのあるものになっていたと思います。
例えば下北沢の再開発問題についてはまさにそうです。下北沢をサブカル的に救うべきと考えるKTDに対して、東浩紀に言わせればそれは「ノスタルジーでしかない」。私が回っている街の中にもちょっと特殊な雰囲気のところがあって、他の街に住み、ちょこまかといろんな街を回っている私としては「そういう街も面白いんじゃない?」なんて思ったりもするんで須賀、実際にそこに住んでいる人は、その特殊性ゆえのデメリットを強く感じていたりもするわけです。私はノスタルジーを感じるほどその街の歴史を知っているわけでも何でもないので須賀、一つの個性的な街並みが「地域住民による環境浄化の積極的な努力によって」失われていくことに幾ばくかの淋しさを感じないわけではありません。かといって自分たちが住む街をより住みよくという彼らの思い自体は、至極自然なものだとも思いますし…
そういった形で都市やそれにまつわる問題を、自分自身で多少なりとも「東京から考える」ことのできたよい読書体験だった、と理解していいのではないでしょうかねぇ、えぇ。

*1:学生時代の友人たちはそう呼んでいました