東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)
- 作者: 東浩紀,北田暁大
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2007/01/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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また、ちょうど私自身が街に出て、街の話題を探したりすることを始めた時期とも重なったせいか「郊外のジャスコ化」や「エスニックタウンの不可視化」など、街を眺める視座として興味深いものを得ることができたように思います。あるいは新聞記事という形で彼らの議論を検証できたら面白いかもしれませんね、具体的にどういう形に落とし込むかが難しいんでしょうけど…
あとよかったと思うのは、読み進めるにつれて二人の立ち位置の違いが表れてきたことでしょうか。東浩紀が人間の動物としてのあり方を重視して都市を考えたのに対して、KTD*1はその「人間工学」のイデオロギー性を見ようとする。その差異が徐々に際立つことで、対談全体もしまりのあるものになっていたと思います。
例えば下北沢の再開発問題についてはまさにそうです。下北沢をサブカル的に救うべきと考えるKTDに対して、東浩紀に言わせればそれは「ノスタルジーでしかない」。私が回っている街の中にもちょっと特殊な雰囲気のところがあって、他の街に住み、ちょこまかといろんな街を回っている私としては「そういう街も面白いんじゃない?」なんて思ったりもするんで須賀、実際にそこに住んでいる人は、その特殊性ゆえのデメリットを強く感じていたりもするわけです。私はノスタルジーを感じるほどその街の歴史を知っているわけでも何でもないので須賀、一つの個性的な街並みが「地域住民による環境浄化の積極的な努力によって」失われていくことに幾ばくかの淋しさを感じないわけではありません。かといって自分たちが住む街をより住みよくという彼らの思い自体は、至極自然なものだとも思いますし…
そういった形で都市やそれにまつわる問題を、自分自身で多少なりとも「東京から考える」ことのできたよい読書体験だった、と理解していいのではないでしょうかねぇ、えぇ。
*1:学生時代の友人たちはそう呼んでいました