かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『日本語と韓国語』(大野敏明)

日本語と韓国語 (文春新書)

日本語と韓国語 (文春新書)

日本語と韓国語の語彙や文法などについて、共通する点を中心にわかりやすく紹介する本です。1998〜2000年の産経新聞の連載がもとになっています。
サクッと読んでしまったので須賀、少しでも韓国語に興味や知識がある方なら楽しめる本だと思います。語り口も軽妙な上に、「無鉄砲」という言葉がそのまま使われていたり、物を食べる際のオノマトペ「モグモグ」と韓国語で「食べる」を意味する「먹다(モクタ)」が関係しているという説があったり*1、はたまた「石を投げれば金さんに当たる」風な名前の話が出てきたりと、非常に興味深いネタが散りばめられています。両言語の関係を体系的に論じている、というような肩肘張ったものでもなく、様々な話題を整理して紹介してくれているので、長きにわたる日本列島と朝鮮半島の関係史の一端を、言葉を通じて垣間見ることもできると思います。
それにしても、孫子ではありませんが、彼我を比較して論じるためには、まず自分のことをよくよく知っていなければなりません。まず以て日本語をよく知っている著者だからこそ、こうした本をまとめられたのだと思いました。
あとがきも素敵でした。ちょっと長いで須賀引用します。

日韓は難しいです。歴史問題ひとつとっても、容易に対立は解消されません。ですが*2(中略)大きな文化的基礎を共有しているのも事実です。そのためか、日韓はお互いに相手が、自分と同じだと過信してしまい、それが悲劇を生むもとになることもあります。(中略)同じと錯覚するが故に、いらだちが募るのです。同じ面と異なる面を明らかにすることが、相互理解の第一歩だといえないでしょうか。

言い方は悪いで須賀、20年前はこういうノリの連載が産経新聞に載っていたわけです。産経だけではなく、今の新聞にこういう「余裕」があるでしょうか。

*1:「(お腹が)ペコペコ」「スクスク」「ウルウル」なども同様の例として挙げられています。前掲本との整合性を取ろうとするなら、特定のオノマトペが「採用」され定着していく過程に音韻的なものが作用している、という仮説は立てられるかもしれません

*2:原文ママ