かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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登場人物に刻まれた「三河者」の悲哀/「麒麟がくる」二十話

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桶狭間の戦いの前哨戦と、松平元康(徳川家康)らの逡巡を描いた回でした。

合戦前に於大の方から元康に翻意を促す手紙が送られたとか、ましてやそこに明智光秀が一枚噛んでいたとかいう話は聞いたことがありませんが、元康をはじめとする三河勢が、周辺勢力に翻弄され続けていたことは彼の幼少期を見れば明らかです。例えば、ドラマで無邪気に家康を褒めちぎっていた鵜殿長照も三河ゆかりの武将で、桶狭間後は今川家との血縁関係故に今川方として家康と対立し、敗死しています。

もっと非業の死を遂げたのは於大の方の兄・水野信元でしょう。長篠の戦いの翌年、武田方に内通したとの嫌疑を信長にかけられ、甥の家康によって殺害されてしまいます。よく知られているように、家康の嫡男・松平信康も同様の嫌疑で切腹を命じられていますね。

駿河の今川家の、そして桶狭間後は尾張織田家のジュニアパートナーとしての役割を演じざるを得なかった三河者の悲哀が、今回の登場人物たちの人生にも刻印されているかのようです。

ちなみに水野信元の実子には、徳川秀忠・家光政権下で老中・大老として重きをなした土井利勝がいるのですね。これは知りませんでした。

 

 

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『信長公記』に見える信長暗殺計画/「麒麟がくる」第十九話

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上洛した織田信長を、斎藤義龍が暗殺しようとするー。これは確かに、『信長公記』に出てくるシーンです。

同書によると、上洛する信長の手勢は80人ほど。これとは別に上京した信長の陪臣にあたる人物が、たまたま義龍が放った刺客らと船に乗り合わせ、不審に思って後をつけたため露見した、ということになっています。さすがに本当かなあと思ってしまいま須賀、後に信長は京で刺客らと対面し、「やれるものならやってみろ」的な啖呵を切った、とまで書かれています。

ドラマでは、明智光秀が旧知…ということになっている松永久秀に手を回し、義龍に警告を加えてもらって阻止した、ということになっていますね。後にそれぞれ信長を裏切ることになる2人が、信長を守るために奔走する、というのはなかなか曰く付きな展開でした。しかも信長が久秀を訪ねて茶器を贈ったというのは、間違いなく久秀の最期と関連付けてのものでしょう。まさかあれが、平蜘蛛ではないですよね…(笑)

あと光秀、信長に会った時に仕官を申し出そうな雰囲気でしたね。

父・道三に続き、義龍もナレ死を遂げました。最近気付いたのですが、演じた伊藤英明岐阜市の育ちなのですね。身長も183センチと、197センチもあったとされる義龍ほどではないにせよ大柄で、演技面でも、役との共通性でもよいキャスティングだったのではないでしょうか。伊藤英明さん、お疲れ様でした!

 

 

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『西洋政治思想史』『現代政治理論』

 

西洋政治思想史 (有斐閣アルマ)

西洋政治思想史 (有斐閣アルマ)

  • 作者:宇野 重規
  • 発売日: 2013/10/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 
現代政治理論 新版 (有斐閣アルマ)

現代政治理論 新版 (有斐閣アルマ)

  • 発売日: 2012/03/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

流れで2冊読んでみました。内容はタイトルそのままでして、『西洋政治思想史』は古代ギリシアから主に19世紀までを、『現代政治理論』は権力、自由、平等、デモクラシー、リベラリズムといった「古典的な」概念のみならず、ジェンダーエコロジーといった比較的新しいテーマを巡る20世紀の議論を紹介しています。

前者は、時代背景から有名な思想家の議論を紹介し、次につなげていくという流れができていて、読書案内のような軽めの記述でありながら、時代や場所を経た思想のつながりもおぼろげながら見えてくるようになっています。例えばローマ共和政の強みとされた「混合政体」の考え方は、17世紀イングランドのハリントンらを経由して、アメリカ独立の父たちの三権分立論に流れ込む、といった具合です。

一方の後者はテーマごとにしっかり論じられている印象で、相変わらずロールズの『正義論』を巡る論争は読んでいて面白いんですけど、先程「古典的」と表現した政治学おなじみのテーマと、新しいものとがどう呼応しているのか、そこをもっと重視した記述にしてもよいのではないかと思いました。

分量に限りがある以上、個別の論点を教科書的に説明してくれるよりも、縦なり横なりに串を刺すような展開、それによる(意外な)発見があるーという方が、読書体験としては面白いのかなという気がしました。

 

   

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斜陽の大大名・朝倉家と本領発揮の伊呂波太夫/「麒麟がくる」十八話

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蝮が去り、越前編に突入しました。

越前の朝倉義景は、将軍・足利義輝から「義」の字を与えられ、伊呂波太夫との話題にも出ていた側室を通じて近衛家と、さらには義輝(近衛家から正室を迎えています)と縁戚関係にあるという有力大名です。

とはいえ、この越前の栄華を支えていたのは彼ではなく、朝倉家の長老的な立ち位置にあった朝倉宗滴でした。この宗滴、応仁の乱の帰趨を決める寝返りをやってのけた朝倉孝景の子として生まれ、長きにわたり武勇を轟かせてきましたが、光秀が美濃から逃れることになる前年に死去。ドラマでは表現されていませんが、光秀が現れた時点で、大大名・朝倉家も斜陽の時代を迎えつつあったのでした。

そしてドラマとしては、伊呂波太夫近衛家との関係が強く示唆されるシーンがありました。表情にも含みが出てきて、伊呂波太夫としても演じる尾野真千子さんとしても、いよいよ本領発揮といったところでしょうか。

信長による信勝への毒殺返しも、息を飲むシーンでしたね。帰蝶が金魚を眺めるシーンがその後に起こることを暗示していましたが、本音をうまく喋らせて、相手が持ってきた毒で相手を倒す。信長の見事な機転と言ってよいと思います。「信長公記」によると、信勝は信長の家臣に暗殺されたと書かれていま須賀、ドラマの筋書き通り、信勝の家臣であったはずの柴田勝家の密告があったとされています。また、信勝が毒を名水と偽ったところの「美濃の白山」は、史実でも信勝が信仰していた山だそうで、この辺の逸話の使い方が上手だなと思わされます。

 

  

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「美濃の蝮」生きざまを賭けた一騎討ち/「麒麟がくる」十七話

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斎藤道三が息子・義龍に敗死し、「蝮がくる」が完結しました。

基本的に道三は義龍を評価しなかったとされていま須賀、この長良川での義龍の見事な布陣を見て、愚鈍と思ってきた息子を再評価したとの逸話もあります。

ストーリーとしては、道三が義龍との親子関係に最後までこだわったのは、義龍に「父殺し」の汚名を着せるため、という説明が前面に出ていましたが、私はここに道三の父としての、そして成り上がり者としての思いを見たいと思います。

義龍が道三との親子関係を否認するのは、「美濃の蝮」と呼ばれながらも一国の主に成り上がった道三の生きざまを否定することです(源氏の名門である土岐頼芸の息子と称したことも象徴的です)。確かに、最後の最後に義龍を罠にかけたわけで須賀、跡を譲った息子に人生を否定されてしまった、その悲しみを抱えながらの死だったのだろうと思わされる展開でした。

その後、義龍は道三方についた明智家を攻撃します。明智光安はこれまでひょうきんな演技が目立っていましたが、今回は見せ場になりましたね。ただ、手負いの身で「落城を見届けて後を追う」というのは完全に死亡フラグでしたし、光秀もそれを悟った風に見えました。

次からは越前編です。これまで(ドラマの筋書きとしては)培ってきた将軍家との関係も含め、どのように展開していくのか、期待です。

 

 

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「麒麟がくる」中断・短縮へ 休むなら来週がよいのでは?

毎週楽しみにしている大河ドラマ麒麟がくる」は、一時中断と短縮が不可避になったようです。

 

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ストックがあるのが6月7日分までで、緊急事態宣言が5月末に解除されても14日分には間に合わない。放送中断分はストーリーを縮めて対応する。という流れだとのことです。

確かに、もし地方を中心に緊急事態宣言が解除されていったとしても、多くの感染者が出ている東京から多くのスタッフが地方のロケ地に出向くというのは好ましくありませんし、NHKとしてもしづらい判断でしょう。一昨年の「西郷どん」でも、働き方改革として節目ごとに総集編が放送されていましたので、今回もそういった対応になるのかもしれません。個人的には、次回が序盤のクライマックス(「蝮がくる」最終回)になりそうですので*1、筋書き的にも休むならまずその次からなのかなという気がします。逆算ができないので、何回休むかが問題にはなるんですけどね…

ただ、それこそ「西郷どん」とは違ってストーリー展開がしっかりしている今作だけに、いよいよ本番とも言える「史実時代の明智光秀」の描写が減ってしまうのは残念です。沢尻エリカ降板、コロナウイルス流行による撮影中断と、大河ドラマの歴史に残るようなトラブル続きの年になってはしまいましたが、諸々無理のない範囲で仕上げていってほしいです。

 

 

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*1:次回予告のつくり方がそんな感じでしたね

親子の2020年4月読書「月間賞」

canarykanariiya.hatenadiary.jp

非常に時事的なチョイスで須賀、私はこちら。

新型コロナウイルスも、天然痘のように地上から「撲滅」されることは恐らく考えられず、やがて多くの人が免疫を獲得するなどして「ありふれた病気」になっていくのでしょう。そうした長いスパンでの見通しを与えてくれる本です。

長男はこれと言っていました。1月に、曽祖母を見舞った時に買ってもらった本です。

 

 

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