かぶとむしアル中

取材現場を離れて久しい新聞社員のブログ。 本の感想や旅行記(北朝鮮・竹島上陸など。最初の記事から飛べます)。

北朝鮮竹島イラン旅行記
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『知りたくなる韓国』(新城道彦、浅羽祐樹、金香男、春木育美)

 

知りたくなる韓国

知りたくなる韓国

 

歴史、政治、社会、文化など、幅広い分野で「韓国の現在地」を紹介する本です。日頃の報道などではなかなか出てこない、韓国を知る上での前提条件になるような内容が多く収められています。

例えば少子化や経済格差、老後の経済的不安といった日本でも社会問題となっている現象の多くが、日本よりも苛烈に現れています。その結果、若い世代の少なからずは自国を「ヘル朝鮮」と呼んで絶望し、子供が海外で活躍できるよう多額の教育費を投入するようになっているというのです。単純比較は難しい問題で須賀、こうした格差や生活不安へのフラストレーションの強さは、韓国社会を見る上でかなり重要な要素であるという気がします。

canarykanariiya.hatenadiary.jp

私が見た朴槿恵退陣デモも紹介されていましたが、市民の直接的行動によって民主主義を勝ち取った「成功体験」とともに、プッシュ要因とプル要因のような形でこうした現象も理解できるのかもしれません。

こうしてみると日韓は社会課題という意味でもかなり共有しているとも言えるわけで、お互いの知見を生かしあえるような、前向きな関係が築ければ利益もあると思うので須賀…

やや時事的で「腐りやすい」内容を扱っている難しさはありま須賀、テーマの「横の広さ」でうまく韓国やそこに住む人々の生活を描けている本だと思います。

 

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宇宙人が投げる隕石/長男言行録最終回(5歳0・1カ月)

彼も5歳になりましたので、このコーナーはこの辺でおしまいにしておいた方がお互いのためであるような気がしているので須賀、最後にネタを2つ。

「白いパンツを履いている時に、うんちをするべきじゃなかった」

これは保育園で用を足した時に、お尻を拭くのが不十分だったことがありまして、ちょっとですけど、パンツが汚れてしまっていたんですね。私が叱ったというよりは、お気に入りのキャラクターが描かれた下着だったので、本人のショックが大きかったようです…

まあ確かに、用を足さなければ白いパンツが汚れるリスクはないですし、例えば黒いパンツなら多少汚れてしまっても(清潔かどうかは別問題として)目立ちはしません。その意味で話の筋は通っているので須賀、流石にそれは、この問題の解決法としては妥当ではないでしょう(笑)

子供の発言なら笑って他の解決策を提案できますけど、たまに大人の世界にもこういう論法が出てくることがあるので、注意したいなと思いました。

 

もう一つは細君からの又聞きなので須賀、こんなことを言ったそうです。

隕石は、宇宙人が投げるの?

たまたま恐竜についてのマンガを読んでいた時期に、テレビで恐竜の絶滅についてやっていたのを見て母親にこう尋ねたのだそうです。微笑ましいですね。ただ極端な話、本当にそういう隕石もあるかもしれませんよね。太陽系の外に飛んで行った探査機だって、地球外生命体からすればまさに「地球人が投げた金属塊」でしょうから。

 

冒頭で申し上げた通り、もう一丁前の少年である長男の言動を父親の恣意でつまみ食いするのは終わりにしようと思います。いつか本人と、笑ってこのコーナーを見返せる日が来るのを楽しみにしています。

 

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読破は一日にして成らず/『ローマ人の物語1』(塩野七生)

 

ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) (新潮文庫)

 

第1巻を楽しく読ませていただきましたが、2巻目以降はまた気が向いたら読むことにしました。

中学生の頃ほど「歴史小説を読むくらいなら、史実(と目される内容)が書いてある専門書を読んだ方がいい」と思うわけではありません*1が、読み切るのにどのくらいの期間がかかるかなと考えた時に、今は本棚にある別の本を先に読みたいと思うに至りました。

専門書もそうですけど、小説も歴史に対する切り口や解釈がないとまとまったものは書けないはずで、その点でも『ローマ人の物語』は面白そうだとは思います。ただやはり、読破するのも「一日にして成らず」感は強かったです…

saavedra.hatenablog.com

たまたまこんな記事も見つけて読ませていただきまして、ここに紹介されている本を読んで気分が乗ってきたら、いつか読んでみようかなと思います。

 

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*1:最近司馬遼太郎ばかり読んでいる

『「右翼」の戦後史』(安田浩一)

 

「右翼」の戦後史 (講談社現代新書)

「右翼」の戦後史 (講談社現代新書)

 

当事者らへのインタビューを交え、終戦前後から現在までに至る「右翼」の諸潮流の歴史を紐解いた本です。

終戦後に集団自殺*1をした人達や、反共のために親米に立ち位置を取り、権力からの働きかけもあって自民党を支える動きを取った例えば「行動右翼*2達、「新左翼」と反響し合いながら「親米右翼」への異議申し立てを続けたいわゆる「新右翼」、宗教右派の流れから草の根の元号法制化運動を成功させ、現在の日本会議に連なる潮流、そしてついには既存の右翼を併呑ようにすらなった「ネット右翼」など、「右翼」というワードに括られる人達の多様な思想やありようを描写しています。各勢力の系統関係・人間関係が押さえられていて、教科書的な戦後史では断片的にしか見えない繋がりを知ることができた気がします。

canarykanariiya.hatenadiary.jp

著名な著作である『ネットと愛国』でも描き出しているように、「一見普通の人」がヘイトクライムを起こし、中央省庁までもがヘイトスピーチを「尊重すべきご意見」として承る今、社会そのものが極右化している、と著者は喝破します。政権がそうした感情を利用して隣国との相互依存関係を破壊し、それが社会に反響して露骨な嫌悪表現が蔓延るー。この1ヶ月ほどの間に日本で起こっていることも、この「社会の極右化」を非常に端的に示しているように思えます。

 

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*1:敢えて自決とは言いません

*2:街宣車から演説や軍歌を流すなど、示威行為を重んずる

『いまさらですがソ連邦』(速水螺旋人、津久田重吾)

 

いまさらですがソ連邦

いまさらですがソ連邦

 

もちろん今はなきソ連について、その歴史や軍事・諜報、経済、市民生活や文化などをイラストを交えて解説した本です。

古くからロシアではなくソ連渡航を重ねている愛好者が、しばしば現在進行形の文体でリアルなソ連情報を語っています。以前さらっと観光してしまったモスクワの名所の、ソ連時代の様子も知ることができて興味深かったです。当時この本があれば、読んでから出掛けたかったですね。

canarykanariiya.hatenadiary.jp

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私がソ連・ロシアに抱く関心の一つに、「社会主義の祖国」であるという点があります。要するに北朝鮮への影響や比較論というところになりま須賀、やはり公定価格と実勢を反映したヤミ価格が乖離していくというのは、両者共通していました。この本を読む限り、北朝鮮よりソ連の方がそれが緩慢に進んできたようで、それが北朝鮮の経済・政治体制にどのように影響してくるのか、予断は許さないのかなあという気は改めてしました。

 

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対北朝鮮ちぐはぐ外交の内幕/『ルポ 金正恩とトランプ』(牧野愛博)

 

ルポ 金正恩とトランプ 米朝の攻防と、北朝鮮・核の行方

ルポ 金正恩とトランプ 米朝の攻防と、北朝鮮・核の行方

 

朝日新聞記者である著者が、シンガポールハノイ米朝首脳会談の舞台裏を報告した本です。内部統制が取れないままシンガポールでの「失地回復」に躍起になる米国、楽観的に過ぎて前のめりな韓国、そしてやはりリーダーが猪突猛進型の北朝鮮が、北朝鮮の核問題を巡りどのような(ちぐはぐな)外交を展開したかがリアルに活写されています。

特に米韓のちぐはぐさには、トランプ・文在寅両大統領の政治ショー的な手法が寄与していると著者は指摘します。複数国で歩調を合わせなければならない外交課題がある場合でも、リーダーが政治ショーを通じてそれぞれの国内世論の方を向いた振る舞いをすれば、それが叶うはずもありません。

canarykanariiya.hatenadiary.jp

以前読んだ本の一番最後にこんなことが書かれていましたが、現状では「強い決意に基づき長期にわたって緩みなく」「政策の一貫性」を保っていくことは、現状では望むべくもないことなのかもしれません。

核開発を進める側は、強い決意を持って長い時間をかけて少しずつこれを進めていくのが常である。したがって、これを防ごうとする側にも、強い決意に基づき長期にわたって緩みなく核拡散防止のための措置を取っていくことが求められる。核拡散防止の観点からの政策の一貫性はとれているのか… 

ちなみにこの本は、近所の図書館で借りて読んでみました。流石に本が増えてきたということもあり、長期的に手元に置かなくてもよさそうなものは借りて読もうという試みです。時事的な内容ならそれでいいかな、というのがこの本に関する判断だったので須賀、買っておいてもよかったかもしれないと思えるくらいの内容でした。

 

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『故郷忘じがたく候』(司馬遼太郎)

 

新装版 故郷忘じがたく候 (文春文庫)

新装版 故郷忘じがたく候 (文春文庫)

 

 

秀吉の朝鮮出兵以降、薩摩の苗代川という集落に住み、代々上質の「薩摩焼」を生産し続けた朝鮮出身の人々がいます。この本の表題作である「故郷忘じがたく候」は、その著名な窯元である14代沈寿官氏と著者の交流を中心に、彼らの歴史を語った作品です。ゴリゴリの歴史小説ではありませんが、司馬遼太郎らしい筆致から、14代の人柄や苗代川の風情が浮かび上がってきます。

14代が1966年にソウル大学で講演し「あなた方が36年をいうなら私は370年をいわねばならない」と語ったエピソードや、当時の朴正煕大統領と酒を酌み交わした話など、当時の韓国社会の一面も垣間見えて興味深かったです。

苗代川という地域は今は「美山」というそうで須賀、行ったことがないので一度訪ねてみたいですね。

ちなみにこの14代沈寿官氏は今年の6月に亡くなられていたのですね。本を手に取ったタイミングとしては本当にたまたまだったので須賀、ますます気になる存在になりました。

www.google.co.jp

「斬殺」は戊辰戦争時の伊達藩を中心とした奥州情勢が、「胡桃と酒」は細川忠興に嫁いだ明智たま(細川ガラシャ)が題材となっていて、こちらも楽しくページをめくれる作品です。

 

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